マヨネーズのうた

マヨネーズのうた 作詞:私

雪がぱらついてた12月のある日、私は彼に別れを告げた。
あんなに仲良かったのに、こんな日が来るなんてね。

上野にパンダ見に行ったね。あなたは結局一銭も出さなかったね。
私の誕生日、すき家で済まそうとしたよね。トッピング禁止で。
ディズニーランド、全部私の奢りなんだからもう少し楽しそうにしてよ。こっちに付き合ってよ。

私も今年29。どうするか迷ってたの。
あなたはずっとコンビニバイト、そろそろ正社員目指そうよ。
バンドマンだっけ? メジャーデビュー目指してるんだっけ? 5年くらい何もしてなくない?

それでもあなたが好きだった。
人の金で食うチェーン店の限定メニューを上から目線でレビューするあなたが好きだった。
私が辛いとき、気を利かしてハーゲンダッツを買ってきてくれるあなたが好きだった(私の金で)。
私の寂しさにすぐに気づいてくれるあなたが好きだった。
何だかんだ顔が良かった、それが一番だった。

でもある日見つけたの、あなたのきらいなところ。
それは何でもかんでもマヨネーズをかけるところ。
魚にマヨ、肉にマヨ、煮物にマヨ、揚物にマヨ、カレーにマヨ。
さすがに見てるこっちが気持ち悪い。胃もたれするわ。
最初は我慢してたけど、年々無理になってきたの。

ちょうど7年前の12月、通学路で使う赤い橋。雪が舞う中、言ってくれた「付き合ってください」。
その一言が嬉しかった。
あ、やっぱり嘘。場所は大学近くのガストだったね。
ごめんね、私橋の上での告白ってシチュが好きなんだ。

気を取り直して、私はあなたに別れを告げる。
「私と別れてください」と。赤い橋の上で。
あなたはバツの悪そうな、困ったような顔をしてた。
でもすぐに「うん」と答えた。理由も聞かずに。
そしてあなたは去っていった、その背中は寂しそうに見えた。
段々遠くなるあなたの背中、私は一言つぶやいた「ありがとう」。

家に帰る。もうここに来ることない彼の姿を見る。
使いさしのマヨネーズをゴミ箱に捨てた。
恋の終わる音がした。